高尾の豆知識 


  

紅葉の仕組み


 「もみじ狩り」の主役はなんといってもイロハモミジやハウチワカエデなどのカエデ類ですね。イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジは大きくは同族とみることができます。天然のものでは、イロハモミジは太平洋岸(北海道、本州北部を除く)、ヤマモミジは日本海側(青森県から福井県まで)と棲み分けているように見えます。

 でも、これら以外にも紅葉する植物は数多くあります。例えば、カエデ以外で紅葉が目立つものとしては、高山の山頂付近や北海道などの街路樹として用いられるナナカマド、里山で見られるハゼノキ、ツタウルシ、ヤマウルシ、ヌルデなどのウルシ科の植物、その他に、イワシデ、ニシキギ、カマツカ、ドウダンツツジなどがよく知られています。
 民家周辺では、サクラ、カキ、ナンテン、ヤマブドウ、ツタなど、街路樹では、ナンキンハゼ、アメリカフウも紅葉が美しいですね。 

  また、同様に、鮮やかに黄葉する木としてはイチョウ、カラマツ、カツラ、ダンコウバイなどがあります。そしてブナやミズナラ、ダケカンバ、ケヤキなどの葉は褐色に変化しますが、気候によっては鮮やかな紅葉に見えることもあります。これらの紅葉は主に秋の落葉時に見られるものですが、春の新芽が伸びる時期に葉が赤くなるものもあります。

 アカメガシワやヤマザクラ、カナメモチ、ナンテンなどの芽吹いたばかりの葉は鮮やかな赤色をしています。四季がはっきりしている日本ではこうした植物の色の変化がみられ、我々の目を楽しませてくれます。

 ところで、この紅葉、なんで秋になると、これほどまで真っ赤に色づいてくるのでしょうか。樹木は、秋から冬にかけて気温の低下とともに、葉を落とすために葉と枝の境に離層を形成します。これができると葉と枝の間で水や養分の流れが妨げられてしまいます。カエデ類の葉の細胞には葉緑体という光合成をおこなう器官があります。この葉緑体の中には緑色のクロロフィルと黄色のカロチノイドという色素があるので、光合成をおこなっている夏のあいだ葉は緑色に見えます。

 ところが落葉前になって光合成をおこなわないようになると、カロチノイドは残りますがクロロフィルは壊れていきます。加えて細胞中にあった糖分がアントシアンという赤色の色素に変わります。こうして黄色と赤色の色素があるので葉が赤く見えるのです。アントシアンが出来るには8度以下の低温と十分な光が必要だと考えられています。空気が澄んだ冷え込みの厳しい山あいで鮮やかな紅葉が見られるわけはこうした気象条件が整っているからなのです。

 イチョウやブナねコナラなど葉が黄色くなるものは、もともと葉に含まれていた黄色のカロチノイドという色素が、葉緑素が分解されていくことにより、目立って現れてくるため黄色い葉となります。植物の種類により、この過程には個性があり、紫、赤、橙、黄というように様々な色が形成されます。


紅葉前線


 毎年、紅葉の色合いは違くなります。色合いのすばらしい年もあれば、色づきの悪い年もあります。また、木によって紅葉の進みが早いもの遅いものがあります。紅葉が遅く葉が緑のものが混ざると遠目に見ると紅葉の色合いが悪くなります。

 紅葉が美しくなるためには気温と太陽の光と水分の3つがポイントとなります。特に重要なのが気温。昼と夜の気温の差が大きいほど紅葉は美しくなります。この温度差によって紅葉のメカニズムが促進され、葉の色合いもよくなり、木々が一斉に紅葉するので美しい紅葉となります。 

 紅葉前線の他に、桜前線、つばめ前線、ススキ前線、イチョウ黄葉前線などをよく耳にします。桜前線やつばめ前線が南から北上するのに対して、紅葉前線は北から南下していきます。紅葉は、10月初旬に北海道の大雪山周辺から始まり、大平洋の海岸部では12月初旬まで約2ヶ月間を要します。一般的には北から順に紅葉が進みますが、カエデなど高地にあるものは標高の高いところから山を降りてきます。このように、紅葉前線は緯度と標高差の組合わせからなるものです。

 植物や動物の状態が季節によって変化する現象を生物季節現象と言い、その現象の観測を「生物季節観測」と言います。生物季節観測の目的は、生物に及ぼす気象の影響を知るとともに、その観測結果から季節の遅れ進みや、気候の違いなど総合的な気象状況の推移を知ることにあります。

 気象庁の全国約98か所の気象官署で、イチョウの黄葉、イロハカエデ(イロハモミジ)の紅葉、サクラの花、ウグイスの初鳴、モンシロチョウの初見などの生物季節現象を観測しています。その中で、秋の美しい現象である紅(黄)葉は一般に高い関心があります。
ちなみに、紅葉についてはイロハカエデ等を対象とし、紅葉日を観測します。また、植物季節観測は、気象官署構内の標本を対象に行う。構内に標本がないときは気象官署の付近にある植物を標本に指定します。

 紅葉見物のことを「モミジ狩り」といいますが、実はヤマモミジなどモミジと名のついた植物はすべてカエデ科の植物、学術的にはモミジという植物はありません。
 カエデの名は万葉集に「かえるで」とあることからきます。葉の形がカエルの手(足)に似るからといわれています。また、とさかのように紅いことから「鶏冠木」とも書かれました。モミジの方はカエデ属という特定のものでなく、秋になって葉が紅くなることから紅葉する樹木の中でカエデ類が代表であるのでカエデ属をモミジというようになったとされています。
 ただ現実にはイロハカエデをイロハモミジと呼んだり、カエデの別名としても使われています。また、盆栽界では区別されていて、イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなど葉が5つ以上に切れ込んで掌状のものをモミジと呼び、それ以外のトウカエデ(切れ込みが3つのもの)などをカエデと呼んでいます。






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