高尾山は水の山 水の上を歩く快感高尾通信

高尾山の雑学・豆知識

高尾山は水の山 水の上を歩く快感

 高尾山の北側斜面はイヌブナとブナなど落葉樹主体の温帯林、南側の斜面にはカシ類など常緑樹の暖帯林の森が広がっています。
 実は、高尾山は日本一植物種の多い山(約1300種)で、山ひとつでイギリス一国の植物種に匹敵します。タカオスミレやタカオヒゴダイなどの固有種も60種以上。昆虫は約5000種、野鳥は150種。世界的に見ても、驚くべき多様な生物種を誇る山なのです。
 一方で、高尾山は年間登山者数が260万人と富士山、エベレストを越える「世界一」の登山者数を誇る山でもあります。特に2007年に仏ミシュラン社の旅行ガイドに掲載されたことなどを理由に、高尾山への登山者は増えています。

 通常、これだけ登山客が多くなれば山は衰退していくものです。ところが、高尾山は、まだ自然を保っています。この理由は、高尾山の水の豊富さと言われています。高尾山をはじめとする周辺の山々は、1億年ほど昔は海底であったと考えられています。そしてこの海底に、およそ7000年前~1億年前の間を通して、少しずつ地層が堆積していったのです。
 この海底の層は、その後の何度となく発生した大規模な地殻変動によって海底の地盤が盛り上がり、海上に姿を現し、そして高尾山をはじめとする周辺の山々に形成されていきました。
 そのため地層が、70度~80度とほぼ垂直になっているのです。これは小仏層と呼ばれていますが、この地層と地層の隙間を地下水が縦横無尽に通っているのです。雨が降ると、地面にしみ込んだ水は、この地下水脈を通り、約15年間、高尾山の地中をめぐります。高尾山のいたるところには、湧き水があふれていますが、この水の循環が、多くの命をささえているのです。

 ですから、この貴重な森を支えてきた豊かな地下水脈がが変わって環境が変われば、移動のできない植物は生きられない。その植物がいる環境で生きていた昆虫や、それらを餌としていた鳥や動物たちにも影響が出てくるかもしれません。


 高尾山は水の山です。土の上を歩いているというより、水の上を歩いていると言ったほうが近いという人もいます。しかし、その水の山も大きな穴をあけられると、水を吹き出し、弱っていってしまいます。高尾山で見かけるブナの森は、他の森林と比較して保水力が高いと言われています。「ブナの森に水筒はいらない。」と言われるほどの保水力の秘密はブナの葉と地面にあります。しかし、その高尾山にトンネルを掘ることは、水筒に穴をあけるも同等です。

 高尾山にトンネルを掘ることで水脈を損傷したら、地下水位の低下は避けられず、根の浅い植物、特に実生木の成長は止まってしまう。現在自然林の成立している所でも、次世代の幼木の無い林に未来はないかもしれない。建設省はトンネルの防水は完璧だと言っているが、それはトンネル内に出水しないだけで、水脈の損傷することは避けられない。
 実際、今までは小さな沢でも枯れることはなかったものが、最近は雨が降らないとすぐに水が涸れてしまうところが出てきたと地元の方はいいます。6号路の途中、琵琶滝近くの稲荷祠の湧水は、何度も水涸れをおこしています。
 このあたりは直下わずか20mくらいの地点をトンネルが通っているのです。また、高尾病院裏の登山道入り口にある妙音谷湧水も涸れているなど、常時水があったところの水量が少なくなっています

 そしてとうとう2012年3月、この高尾山を貫通する「圏央道高尾山トンネル」が完成しました。そして6月には高尾山インターチェンジと相模原相川インターチェンジ間が開通し、東名高速と中央高速が圏央道で繋がったのでした。高尾山トンネルは、水をあまりに吹き出すため、海底トンネルと同じ工法で掘られ、1mにつき7000万円という税金がつぎ込まれたといいます。
 これからこのトンネルによって水の山高尾山が、だんだんと保水力失い、高尾山の衰退の始まりに繋がるのではないか。心配でなりません。

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