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江戸っ子だってねえ、関東綱五郎 何と高尾山麓で酒飲みねえ

 「江戸っ子だってね、スシ食いねえ、酒飲みねえ」、金毘羅参りに行く森の石松が船の中で有名な次郎長の子分は大政、子政、桶屋の鬼吉、関東綱五郎、宝印大五郎、増川仙右衛門、追分三五郎とすしをすすめおだてながら自分の名前が出るのをいらだちながら待っている「清水次郎長伝」の内「石松三十石船」の一場面は有名だ。

 さてここで出てくる「関東綱五郎」は、流れ者で、旅の途中で黒目の五郎という親分に一宿一飯の義理で依頼を受け、「喧嘩の使い」で次郎長の所にやってきます。通常、こういう使いは、白刃に囲まれ、斬られてしまうのですが、このとき次郎長は、斬らずに帰してくれます。綱五郎は、次郎長が自分を斬らずに帰したことに意気を感じ、桶屋の鬼吉に続き、2人目のおしかけ子分となります。
 映画や講談では、ややお調子モノ的なところがあるものの、見かけによらず冷静で意外と頭が回る面も持つ愛すべき存在として描かれている。村上元三の小説『次郎長三国志』では同名で登場、清水次郎長配下の「清水二十八人衆」に数えられる大瀬の半五郎(おおせのはんごろう)と同一人物であるとされる。

 ところでこの「関東綱五郎」は、ここ高尾山麓の住人であったようだ。
 高尾、落合の集落に口留番所という関所があったが、この付近に八王子を中心に活躍した鈴木家という千人同心の大きな屋敷があった。関東綱五郎は、この屋敷の主、八王子千人同心を務める鈴木惣七の息子、つまり鈴木家の6代目・綱之助として生まれるのです。

 甲州街道(国道20号)の端に「侠客関東綱五郎住居跡」と関東綱五郎が生まれた家の跡にはそれを示す石柱が建てられている。(高尾駅を出て、国道二十号線を高尾山方面に進み、上椚田橋を越えると右手の電信柱に隠れるように小さな石碑が建てられている(八王子市高尾町1915)見落としがちなほどひっそりと建っています)

 親戚とのいざこざが原因で、旅のわらじを履くようになったと言われいますが、後述の綱五郎の墓碑銘によると、数え年19歳のときにあたる1840年(天保11年)に出奔し、上野国(群馬県)を経て各地を遍歴し、駿河国清水湊(静岡県静岡市清水区港町)に流れ着いたという。
 山本鉄眉(天田愚庵、1854年 - 1904年)が次郎長に聞き書きし、次郎長の生前に上梓した『東海遊侠伝』(1884年)には、第十二回『笠砥高市両党争威 荒神激闘二魁殞命』(笠砥の高市に両党威を争い荒神の激闘に二魁命を殞す)という章があり、綱五郎がかつて「半五郎」だったころ、江戸にいて遊郭に遊んでいたが、ある娼妓が綱五郎が粗野なのが嫌で雑に扱ったところ、綱五郎は拳銃を懐に入れて店に現れて娼妓を射殺、駿河国へと逃亡、やがて次郎長一家に入ったという略歴を伝えている。

 さて綱五郎は、1866年5月22日(慶応2年4月8日)、伊勢国荒神山(三重県鈴鹿市高塚町観高尾山 大光寺音寺)で勃発した「荒神山の喧嘩」では、大政が率いる本隊に対する別働隊として、甲斐国八代郡上黒駒村の黒駒勝蔵らを制圧するために隊を組んで甲斐・信濃へ転戦しており、この2隊が三河国幡豆郡寺津村(愛知県西尾市寺津町)で合流し、吉良の仁吉を先頭に荒神山へ向かったという。荒神山では、黒駒勝蔵一家・穴太徳一家の連合軍と戦闘、仁吉を失ったものの、勝利を収めたという。

 その後清水の次郎長の子分を経て、京都で火薬商を営み、成功を収めた時期もあったようですが、晩年は、明治維新後に帰郷、当時の住居を菩提寺の大光寺の庫裡に納めて隠居。故郷に戻って暮らして明治19年(1886年)に亡くなっています。
 お墓は当初落合山寄りの墓地あったのですが、昭和52年に大光寺に移転されています。

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 また、もとの落合山寄りの墓地には、末裔によって「関東綱五郎墓之跡」と刻んだ碑が建てられている。碑陰に綱五郎についての以下の説明がある。

鈴木綱五郎は鈴木家の六代目に当たり祖先は甲州武田氏滅亡により旧浅川村落合に移住す。 文政五年(一八二二)に生まれ青年期は幕末に当り世は騒然とし狭い浅川村に座すことが出来ず家を出て関東綱五郎と名乗り侠客の仲間に入り遂に清水次郎長の門を叩きその客分となり世に名を挙げ初老期に帰郷して村民の面倒を見る。当時の住居約四十五坪総欅作りの家屋を明治十年頃菩提寺の大光寺の庫裏に納め隠居し明治十九年十一月歿す。墓は昭和五十二年三月二十七日大光寺構内に移転す。

   昭和五十二年七月十三日 実孫 故 持田ツネ
         八代目嗣子 医博 鈴木幸雄
          実孫の夫   医博 持田治郎


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