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日本遺産「霊気満山 高尾山 人々の祈りが紡ぐ 桑都物語」

 文化庁は2020年6月19日、地域の有形・無形の文化財をテーマ性のある「ストーリー」でつなぎ、地域振興に役立てる「日本遺産」として、「霊気 満山 まんざん 高尾山 人々の祈りが紡ぐ 桑都物語」(東京都)など21件を新たに認定したと発表した。

 「霊気満山 高尾山」は東京都八王子市で江戸時代に発展した織物産業の歴史と、養蚕農家や絹商人らのよりどころとなった高尾山信仰などを今に伝える29件の文化財で構成されています。
 高尾山を訪れた方はよくご存じの高尾山内への入口にある浄心門には「霊気満山」の額がかけられています。これを拝んだだけでも霊気を感じ、背筋を伸ばされた方は多いのではないでしょうか。

 「日本遺産(Japan Heritage)」は地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」として文化庁が認定するものです。
 認定されたストーリーの概要は、戦国時代に関東の覇権を握った北条氏の名将、北条氏照が、養蚕、機織りが盛んで「桑都」と呼ばれた八王子の礎を築き、氏照が武運を祈願した高尾山は霊山としてあがめられ、江戸時代に花開いた桑都の伝統文化が連綿と息づいているというものです。
 その絹産業と高尾山信仰が深く結びついたのは、養蚕農家が大切な蚕をねずみから守るために高尾山薬王院の護符を求めたためだそうです。八王子宿を中心に生糸や織物を扱った絹商人たちは養蚕農家や江戸の問屋に薬王院の護摩札の配札を取り次いだのでした。
 一方、養蚕農家や織物業につく人々は、護摩札による成就返礼として杉の苗木を奉納しました。参道に並ぶ奉納板は、江戸時代から続くもので八王子の方はもちろん群馬や埼玉などで絹産業にかかわる方々のお名前もあります。このようにして高尾山の自然が守られ続けているのです。
 
 八王子市では2017年に市制100周年を迎えたことから認定への機運が高まり、日本遺産準備担当課を新設し、認定に向け、高尾山薬王院の僧侶や繊維業界の有識者に話を聞き、学習を重ねてきたといいます。また、市民にアンケートを取るなどした結果、氏照が高尾山の木々の伐採を禁じたことで現在の高尾山の姿が保たれていることや江戸時代の大久保長安などの歴史上の人物も多く登場する貴重な地域との意見が出され、これを取り込む形で約20稿からなるストーリーを展開したといいます。
 
 「信仰と山」をテーマにした日本遺産は他の地域でも申請や認定があり、市は独自性を出すのに苦慮したといいます。そこで八王子城跡や高尾山薬王院、八王子車人形など二十九の文化財を元に、歴史や文化をつなぎ合わせたのでした。
 中でも「八王子芸妓(げいぎ)」「火渡り祭」「水行道場」など、現地を訪れた人が体験できる無形の文化財を取り入れたのが特徴だといいます。

 ストーリーの中には、氏照が詠んだと伝わる「かいこ飼ふ 桑の都の青嵐 市のかりやにさわぐ諸びと」の歌も盛り込まれているといいます。

 我が国の文化財や伝統文化を通じた地域の活性化を図るためには, その歴史的経緯や, 地域の風土に根ざした世代を超えて受け継がれている伝承, 風習などを踏まえたストーリーの下に有形・無形の文化財をパッケージ化し, これらの活用を図る中で, 情報発信や人材育成・伝承, 環境整備などの取組を効果的に進めていくことが必要です。

 文化庁では, 地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」として認定し, ストーリーを語る上で欠かせない魅力溢れる有形や無形の様々な文化財群を,地域が主体となって総合的に整備・活用し,国内だけでなく海外へも戦略的に発信していくことにより,地域の活性化を図ることを目的としています。

 世界遺産登録や文化財指定は, いずれも登録・指定される文化財(文化遺産)の価値付けを行い, 保護を担保することを目的とするものです。
 一方で日本遺産は, 既存の文化財の価値付けや保全のための新たな規制を図ることを目的としたものではなく, 地域に点在する遺産を「面」として活用し, 発信することで, 地域活性化を図ることを目的としている点に違いがあります。

 日本遺産の認定は2015年度から始まり、東京都は全国で唯一、認定案件がなかったが、今回の「霊気満山 高尾山」で全都道府県が日本遺産を有することとなりました。
 日本遺産は当初から20年までに100件程度の認定を目指しており、今回で104件となったため、新規の募集を当面行わないとしている。
これまで認定された地域の取り組みに温度差があるといい、今後は全体の底上げを図るという。

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