高尾山の新緑の主役ブナの受難高尾通信

高尾山の雑学・豆知識

ホーム > 高尾山の雑学・豆知識 > 高尾山の緑の主役ブナの受難

高尾山の新緑 ブナの受難

 高尾山の新緑の季節を見事に飾る「ブナ」の林ですが、関東近郊の山々ではめったに見ることができません。
 関東地方では深山でなければそもそも自生せず、東北地方の低い山でようやく見られるほどです。

 ところが温帯林に分布するこのブナの木を、高尾山では容易に見ることができるのです。高尾山ではケーブルカーの山上駅広場北側から、自然研究路4号路吊り橋付近までがイヌブナの自然林となっています。高尾山でもここだけで、周辺の山々では見ることができません。

 ブナ林は野鳥や動物達を養い水を貯え、山地斜面を保つうえでも重要な役割を果たしています。
 世界遺産に指定された白神山地をはじめとし東北の山々、そして高尾の山は美しく覆われている。

高尾山のブナ林 しかし、このブナは、かつては役に立たない木の代名詞とでも言うべき存在だったのです。そもそも「ブナ」は漢字では木へんに「無」と書くことからも想像できます。
 せいぜいお椀やしゃもじなどに加工する程度の用途しかなかったのです。ただ、そのおかげで大量の伐採からは免れ、第二次世界大戦前迄は、日本全国に広いブナの林が点在していたといいます。                 
 ブナがその運命を変えるのは、敗戦でサハリンが日本の領土ではなくなってしまったころからです。良質の針葉樹が確保できなくなった製紙業者達は広葉樹を用いた製紙法を開発し、ブナも製紙に利用できるようになったのです。こうしてブナの受難の時代は幕をきることになります。

 日本全国でほとんど「ブナ退治」とでもいわんばかりに大量の伐採が始まるわけです。
 かつては100年もつといわれたブナの林は急速に日本各地からその姿を消していったのです。
 残りわずかとなってはじめて白神山地などでようやくブナ林の保護が始まったのです。

>豆知識目次に戻る

おすすめコンテンツ